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内科医ミーの日常日記です。男の子二人に振り回される日々。 ※医療相談などは一切受け付けておりません。
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惣領冬実さんの漫画。チェーザレ・ボルジアのピサ大学時代を描いている作品です。
コミックスの3巻が発売されていたので購入しました。

川原泉さんの「バビロンまで何マイル?」でチェーザレを知った私。
以降、塩野七生さんの「ルネサンスの女たち」「チェーザレボルジアーあるいは優雅なる冷酷」、永井路子さんの「歴史を騒がせた女たち」、フランソワ・サガンの「ボルジア家の黄金の血」と読み漁り。
漫画でもさいとうちほさんの「花冠のマドンナ」や氷栗優さんの「カンタレラ」なぞを読み漁り(ここらへんは少女漫画的ご都合主義が強いんですけど/笑)。

しかしそれらのどの本でも扱われていなかった10代の頃、ピサ大学時代のチェーザレのお話。
今後この少年があのチェーザレになるんだー、と頷くことしばし、のストーリーです。

この本で主な資料としているのがサチェルドーテという人が1950年に出版した、世界的にも評価が高いとされるチェーザレの伝記本。これまで日本で翻訳出版はされていないという噂です。
この本を元に、「ダンテ学者」の原基晶氏監修のもと、漫画が描かれています。

なにがすごいって、チェーザレという人物のその時代における特異性や天才性をリアルに描き出しているストーリーもさることながら、作画です。
肖像画が残っている登場人物たちの顔は、それらにかなり忠実に描かれています(ロレンツォ・イル・マニーフィコも、その息子のジョヴァンニも、ロドリーゴ・ボルジアも、ローヴェレ枢機卿もそっくり!!)。
町並みや調度も、原氏の監修の下、当時の様子を当時の資料や文献などを参考に再現されています。現在まで残る当時の建物も後世の増築や改修で姿が変わっていることが多いので、現在の姿から当時の姿を想像して再現するという作業をしているのです。
読んでいるうちに、本当に15世紀末の空気が漂ってくるような気さえします。

中でも圧巻は、コミックス2巻に登場した「最後の審判」が描かれ始める前のシスティナ礼拝堂の再現カラーイラストです。
天井にももちろん「天地創造」は描かれておらず、一面の星空の絵となっています。
思わず実家に帰った際に、ヴァチカンで買ってきた公式本(ヴァチカンの歴史などが詳細に書かれた本。もちろん日本語版/笑)を読み返して、当時の姿が描かれた版画の写真と見比べてみたり。

そしてチェーザレのピサ留学当時、ボルジア家はフィレンツェと仲良くしています。晩年のロレンツォやその息子たちが登場します(ピサもフィレンツェの支配下)。
なので今度はフィレンツェで買ってきたメディチの歴史を書いた図説も読み返します(これももちろん日本語版)。
おー、この人がこの後あーなってこーなって、そーなるんだー、などと思いながらまた漫画を読み返すとなおよし。

ストーリーの上では、とにかく革新的な考え方をしているチェーザレにうんうん、と頷きつつ、当時の社会背景を考えたらそういう考え方をするチェーザレはひどく孤独だったはずだと胸を打たれます。
宗教や民族に関する彼の自由な考え方(それぞれを尊重し、優れたところは受け入れつつ融和していく)は、確かに受け入れられれば宗教紛争や民族紛争はなくなるのでしょうけれど、21世紀の現代にだってそれを受け入れられない人々が多いから紛争が絶えないのです。もちろん20世紀後半以降の欧米や日本でなら受け入れられる民族融和の考え方(20世紀初頭の汎ヨーロッパ主義にも通じる考え)なんですが、15世紀のヨーロッパ、特にイタリアではねえ・・・。
そして彼のその考え方の背景にあるのが、ボルジア家がスペイン人であるということ。イスラムとの長年の対立を通して、彼らの優れたところを受け入れていった民族なればこそ生まれる考えなのだというのが、この作品の中ではわかりやすく説明されています。

チェーザレは父親を法王にするために、そして庶子として生まれた自らの逆境を跳ね返すために、天性の才能を駆使して人を操ります。
そんな彼が、ロレンツォの館でレオナルド・ダヴィンチと出会った場面では、歳相応の顔を見せるのがこれまた印象深いです。

ミゲルとの屈折した関係も面白いなー、と思います。
親友であり、主従であり、一番の理解者であり。ミゲルはチェーザレを理解しているがゆえに、チェーザレの狡猾なところも見えちゃっているのですねー。




ちなみにこのお話ではスペイン語でミゲルと呼ばれていますが、日本でもよく知られている彼の呼称はミケーレ・ダ・コレーリア、またはドン・ミケロットです。
私が初めて彼らを知った「バビロンまで何マイル?」の中でミケちゃんと呼ばれていたために、いまだに私の頭の中では彼はミケちゃんです(笑)。

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